私の知らない母と父の関係

私の知らない母と父の関係

倉庫の中でブルーシートに覆われていたのは、父親が若かりし頃に乗っていたバイク。
実の娘である私が、そのバイクに思い出がないのは、私がバイクに興味を持つことに、母親が大反対したからだ。

私、「お母さん、倉庫を片付けようと思うのだけど、お父さんのバイクはどうする?」
母親は迷うことなく、「捨てちゃって良いわよ」。

バイクを処分するには、倉庫からバイクを出す必要があるのだが、バイクのカギが見当たらない。
私、「お母さん、バイクのカギって分かる」
母親、「私が知るわけないでしょ」

家の近所に鍵屋さんがないかネット検索すると、家のスグ近くに鍵屋さんがあることが判明。
長年住んでいるが、鍵屋さんが家のスグにあることは気付かなかった。

その鍵屋さんに電話をすると、「バイク屋に直接引き取ってもらったほうが良いよ」と言われた。
鍵屋さんとの電話を切ろうとすると
鍵屋さん、「どちらの方?」
私、「2丁目のAです」
鍵屋さん、「バイクって〇〇(車種)?」
私、「〇〇かどうかは分からないです」
鍵屋さん、「そのバイク、誰の?」
私、「私の父親のバイクです」
鍵屋さん、「Aさんって、お父さんはもしかして〇〇?」
私、「はい、〇〇は私の父親です」
鍵屋さん、「〇〇のバイクなら、俺が見に行くよ」

暫くすると、古いバイクに乗った年配の人がやって来た。
その年配の人が倉庫に入ると、父親のバイクを見て目を細めた。
鍵屋さん、「懐かしいバイクだ」
私、「父のお知り合いの方ですか?」
鍵屋さん、「ああ、昔のダチだよ」

私、「父は、どうしてバイクに乗らなくなったのですか?」
鍵屋さん、「君が生まれたからだよ」

翌日、鍵屋さんは、父親のバイクを運ぶためにトラックに乗ってやって来た。
バイクのカギが無いことを伝えてあると、鍵屋さんはバイクを運ぶキャリアをトラックに積んで来ていた。
バイクが保管してある倉庫のシャッターを開けると、
私と鍵屋さん、「・・・」
私と鍵屋さんが目にしたのは、シートの上に置いてあるバイクのカギ。

鍵屋さん、「Bさんは元気か?」
私、「お陰様で」
鍵屋さんが言うBさんとは、母親のこと。

父親のバイクを積んだトラックが走り出す際、鍵屋さんがクラクションを鳴らすと、母親がいるリビングのカーテンが少し開いた。

北九州の鍵交換

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