私が勤務する会社は、ビルのワンフロアを借り切って営業しています。そのフロア内に、客室や事務室、執務室があります。繁華街の中にある建物で、ビルには24時間常駐の警備員さんがいて、定期的に見回りをしてくれています。さらに、私が勤務する会社では、某警備会社のセキュリティシステムも導入して防犯対策をしています。私が勤務する会社では、一番最後に退所する職員が、出入り口の施錠と、セキュリティキーの解除(異変時に報せてくれるシステムを作動させるものです)をする決まりになっています。その日、私は執務室で残業をしていました。月末だったので、事務員さんも残業をしているのだろうと思いながら、身支度を整えて事務室の戸を開けて、タイムカードを押そうとした時です。事務室は真っ暗で人の気配がしません。あれ?と思う間もなく、不穏な音が鳴り響きました。暗闇に響き続ける警報音。あまりの恐怖に、私はたじろぎました。今思い出しても、あのシチュエーションは恐怖でしかありません。10秒くらい経った頃でしょうか。天井のスピーカーから、警備会社の方の声が聞こえてきました。「こちら、警備会社の者です。どうされましたか?」と、私に投げかけられました。すっかり混乱していた私はキョロキョロしながら、「えっ、あっ、あっ、、」と不審者全開で声を発しました。「どうされましたか?!」と、口調が強まる警備会社の方。私はどうにか、私が残業していたのに、他の職員がセキュリティキーを解除して帰宅してしまった可能性が高いことを、混乱しながら伝えました。私の氏名を問われたので応じたところ、警備会社に登録されていたようで、無事に警報を止め、こちらに出動する準備をしていたセキュリティスタッフも、出動を中止にしてもらうことができました。テナントは真っ暗でしたが、先ほどの警報音があまりに怖かったので、静かな暗闇がやけに安心する気持ちになりました。翌日、事務員さんに一連の報告をすると、「執務室に誰もいないと思っていました」と何度も謝罪をされました。それ以降、事務員さんも執務室にいる職員も、帰り際お互いに声かけをし合うようになりました。日頃のちょっとしたコミュニケーションの大切さを痛感した出来事でした。